福岡音楽情報ポータルサイト[Blue Jug/ブルージャグ] | Editor's Room | 個人情報について | サイトポリシー | お問合せ |  

HOT NEWSHOT NEWS巻頭PHOTOVoice Gallery月刊INDEX福岡ROCK百科staff blogPodCast
巻頭PHOTO
BAND一覧
ロック年表
ロックマップ
ロック A to Z
写真集
特集
インタビュー
レポート
コラム
対談
アーティスト語録
コレクション
エピソード・コレクション
   
  福岡音楽情報サイト「Blue Jug」TOP > 福岡ROCK百科 > コラム > 今日から世界が変わる(寺本祐司)
コラム


"2000年代"リスト


2006.06.01
今日から世界が変わる


寺本祐司
1.はじめに
 モダンドールズ、あんなに人を熱くさせる、あんなにイカシタ、あんなに人をシビレさせるバンドはない。と思っている。今でも私の車の中には、JポップCDの新譜と一緒にモダンドールズのCDがある。四半世紀前の音源である。デジタルテクノロジーを駆使したものではないが、最新のJポップと遜色はない。インパクトがあり、ハートを鷲づかみで、琴線をやさしく震わせてくれる。

2.モダン創世
The Mods モダンドールズをはじめて観たのは、70年代後半の箱崎祭だった。そのころ佐谷は、ブロンドで、化粧をして、パンタロンにヒール、そしてピストルを片手に歌っていた。
 佐谷は、かなりアグレッシブ。客席のファンを鋭い視線で睨みつける。カメラマンが構えると、撮るなとばかりに足を蹴り上げ、ヒールでレンズをさえぎった。「ドクターX」や「毒蜘蛛」の時代である。
 箱崎祭では、夕方にロケッツ、モッズ、ロッカーズ、フリクションなどを観て、夜中はモダン、フルノイズ、ダイナマイトゴーン、明け方にパイレーツを観た。

3.メンバーが変わったぞ
 次にモダンを観たのは翌年の箱崎祭で、佐谷は茶色の渋いジャケットで登場。デビッド・ヨハンセンのようにノリノリのダンスを踊ってシャウト。
 オールナイトで箱崎祭ライブを楽しんで帰宅。ベッドに入って目を閉じても、まぶたの裏がチカチカとフリッカリング。「ジャンピング・ミュージック」が前頭葉をエンドレスで流れて、なかなか眠れなかった。 とびきり辛いTajカレーを食べて合宿したのもこのメンバーで、関東へツアーにでたのもこの時期だ。

4.モダンドールズのダンディズムって
The Mods 街を歩くときも、ステージと同じように意識的になるべきだ。街を歩くことも練習という徹底したダンディズムを佐谷はもっていた。天神地下街やビブレでモダンのメンバーを見かけることもあった。オフステージで私服姿だったが、そんなときも彼らの周りには圧倒的なオーラがあった。スリルに満ちた弱電流が彼らから放たれていた。とても声などかけられないほど緊張感があった。
 今でもあのとき、佐谷に声をかけとけばよかったなぁ。と思うことがある。しかしあの緊張感に割って入れるほど、一般ピーポーには勇気がなかった。可愛い女子なら「佐谷さ〜ん」とか「みっちゃ〜ん」とか言って話しかけることができただろうが、私は柱の影から遠巻きに「モダンだ。モダンだ。スゲェ、スゲェ」と心の中で狂喜しながら、誰かに教えてやりたいけど、教える人いないなぁ「モダンだ。モダンだ。スゲェ、スゲェ」と、いても立ってもいられない気持ちだったことを今でもしっかり覚えている。
 ライブハウス多夢でのモダンのギグは、まさにピシャリというかカッチリきまっていた。爽快感すら感じるほどパーフェクトなパフォーマンスだった。シティ情報福岡で彼らのスケジュールを調べ、多夢や80’sファクトリーにかよっていたが、当時私はビンボーで、チケットを買ってライブを見て、帰りにラーメン食べたら、バス賃すら残らない感じだった。それでもモダンのライブだけは見逃せなかった。
 須崎公園でのライブイクスプロージョンや天神開放地帯は無料で豪華キャストなので大好きだった。あるときの須崎ライブは、前座がチェッカーズでトリがモダンだった。 モダンドールズは、FM福岡にも番組をもっていた。番組中、女子高生の悩み相談のハガキに対し、まじめに答える佐谷が印象的だった。こんな感じだった。
  「俺は、進路のことやらいう柄じゃないばってん、今、高校3年で大事な時期やけん、大学に行くか就職するかはしっかり考えんといかん」

5.早すぎた自叙伝
The Mderndollz 佐谷の詩は、非常に文学的で、たとえば、さんざめく、かじかんだ...など普通の人があまり使わないような単語も、縦横無尽に使いこなしている。
 それと、バングラディシュ、イスラエルの女...など、国際情勢、政治、報道のジャンルまで詩世界でカバーしている。今でこそ、中東問題や食糧問題がメディアに広く取り入れられ、社会に浸透しているが、ロックのジャンルで、それも20数年前に佐谷は歌詞にしているのだ。シェギードッグストーリーという単語、彼が曲にしなかったら一生耳にすることはなかっただろう。
 だから、彼が今でもロックを演っていたらどうなっていただろうかとか、詩人に転向したら、小説家になったら、俳優になってもきっと凄い演技を映画なんかで見せていたろうと夢想している。

6.プラスとマイナス
 一度だけ、モダンドールズに対する。マイナスの意見を聞いたことがある。次はいよいよモダンドールズの登場というときに、横にいた女性客が「曲はいいけど佐谷さんのアクションが...」と言うのだ。当時は、佐谷のバイセクシュアルなアクションを受け入れない人もいた。今、テレビは、バイセクシュアルをとおりこし、オカマ、ゲイ、オタクのオンパレードで、ノーマルなタレントよりその数が多いくらいだが。
 佐谷のあまりの美しさに、ライブハウスでは失神女性続出。1960年代のGSさながらだった。それについては、他のメディア参照。
2001年、新宿クラブドクターでの佐谷光敏追悼ライブでも失神する女性がいた。ステージに佐谷は、いないのだが、私の前で、モダンドールズプロジェクトに聞き入っていた女性が、突然ふらっと倒れた。楽曲と思い出だけで気を失ったのだ。彼女のまわりの人が皆で、その女性を手厚く看病したり、外に連れ出すのを見た。モダンドールズを中心に、一つの共同体のようなものが出来ていると感じた。

7.エキセントリックな時代
 ある年のライブイクスプロージョンのとき、観衆にどよめきがおこった。「ギターとベースが変わっとるじぇ」「誰や?誰や?」観衆は息をのんだ。平山(g)田中(b)ではなく小峰(g)田浦(b)がステージに立っていたのだ。
 実際には、小倉インアンドアウトで、小峰はすでにモダンデビューをしていたのだが、観衆の多くは須崎公園ではじめて新生モダンドールズを知ることになった。この後は、周知のとおり、立体的で透明感のあるモダンドールズへ華麗に変貌していく。

8.東京はどう見ていたか
The Mderndollz 1983年に宝島JICCから発行された、「ロッカーズ1983」という書籍には、全国のロックバンドやロッカーが紹介されている。モダンドールズについては、「佐谷の作るオリジナルナンバーはポップな味付けが施されたブリティッシュビート風なロックンロールが多い」と紹介されている。ちなみに表紙は町田町蔵。
 1984年に発行されたその改訂版には「めんたいロックブームに続く、博多からのセカンドウェイヴを担う」と紹介されている。で、ここに掲載されてる佐谷の写真が、ま私の知るかぎりではベストショットではないかと思う。白いドレスシャツの伸ばした右手にマイクスタンド、直角に肘を曲げた左手は開いたままそっとウエストのあたりをおさえている。佐谷はうつむいていて、ちょうど「バレンティノ気取って」のギターソロに聞き入っている感じだ。もう一つのベストショットはBlue Jug 13号掲載の写真で、富士映劇の楽屋かどこかで足を組んで椅子に腰掛けた写真だ。
 東京の評論家もよくモダンを調べてるな〜、ハッピーと思うと同時に、まだまだ、必殺技や引き出しやサプライズがあるぞ、調査が足りない。と、ほんの少しだけ微小な憤りを感じた。

9.カリスマである
 ヒートウェイブ山口洋から、佐谷は最高のロッカーであると同時に、酒が強く、女性にモテ、さらに拳法の達人でもあるという話を聞いた。それで、ジャンプしたりターンしたりステージ上では常に激しいアクションをしても大丈夫なのだと納得した。振り上げた手は指先まで神経がとおっていて、キックがビシッとキマルのも、拳法の裏づけがあるからなのだ。フェイクス武田祐次と話したときも同じことを聞いた。
 モダンドールズには、それこそプロアマを問わず熱烈な信望者がいる。皆モダンドールズが大好きなのだ。モダンのソロコンのとき、山部善次郎が外車で都久志会館の玄関に横付けしていたのも印象深かった。

10.親友、でも一度も話したことはない
 佐谷から電話をもらったことがある。それは原稿の依頼だったのだけど、私は当時バイトに奔走していて、佐谷と直接話せる、たった一度のチャンスを逸してしまった。今でも思い出すたびに、非常に悔しい。悔しくて残念でどうしようもない気持ちだ。もし電話に出ていたら以下のような話になったと思う。
  「もしもし、○○さん。モダンドールズの佐谷です。今度、都久志会館でコンサートば、するっちゃけど、そのパンフレットに何か書いて頂けませんか?デモテープと歌詞のラフタイプをお渡しします。参考にして下さい」
 カーステレオでモダンドールズのCDをかけ「この歌手は私の親友だ。でも一度も話したことはない」というと助手席から「そ〜んなこと、ないやろ〜」という返事が返ってきた。

11.ポストモダン
 初期のモダンの歌詞には、かなり直接的な性表現があり、エロティックで大好きだ。そんなエロティックな歌詞のエッセンスは、ロキシースパイダーの福島モトキが受け継いでいるのでは、と個人的に思っている。ロキシーの「スパイラル・ロックンロール」「ピンキー&ブラックマシーン」は、速くて、エロティックで、イカシてる。「モンキードライブ」や「オーバーヒート」を思い出す。が、決して曲が似ているということではない。
 松川在籍のヴェルヴェッツの楽曲を聴いていても、これって佐谷へのレクイエム?と思えてならない曲がある。これも私が勝手にそういう見方で歌詞を聴いているからかもしれないが。「アライブ」などそう思えてならない。ロキシーの「フラワー」もビールを買って佐谷のマンションに行く、そういう話だろうと勝手に解釈している。ヴェルヴェッツについてつけ加えると、楽曲はどんどんモダン離れしている。「クリミナルサイレンス」などは形態の異なる、一つの確立されたジャンルの曲である。私は、デビューしたての国仲涼子がこの曲を紹介している番組のビデオをもっていて、夜な夜な一人で噛みしめるように観ている。

12.おわりに

The Mderndollz 佐谷が亡くなった後、東京でCD2枚、ビデオ2本がリリースされた。また、福岡でもCDが4枚リリースされた。さらにUKプロジェクトからもCD2枚がリリースされている。亡くなったあとにこんなに沢山の作品が世に出ること、世に出そうとする人がいてそのパワーがあったことからも、モダンドールズの魅力を十分推し量ることができるだろう。
 モダンドールズを知って以来、世界が変わった気がする。
(了)

「Voice Gallery」---寺本祐司氏 コメント公開
「コレクション」---寺本祐司氏 コレクション公開


↑ ページのトップへ  

 (C)since 1979 BLUE-JUG/当WEBサイトの画像およびテキストの無断掲載はお断りいたします。         $date /$no th
";?>
 福岡音楽ポータルサイト   copyright since 1979 BLUE-JUG. All Rights Reserved Contact US at staffroom@blue-jug.com